
節目の選択とジュエリーの関係
この1〜2年、わたしの周りでは大きな決断や節目を迎える人が多く、その人たちがそこに辿り着くまでの道のりや、その選択によって生まれる別れや新しい始まりに触れる機会がありました。それぞれに物語があり、わたしはその断片しか知り得ませんが、そこに至るまでの選択や経験のすべてが今へと繋がっています。 そこで思うのは、どんな選択であっても、自分の心が喜ぶ方へ素直に向かっていくことが、これからの時代はますます大切になっていくということ。その思いを、より強く感じるようになりました。 自分の心に従うことは、決して簡単ではありません。社会の目や今いる環境に合わせるのではなく、自分自身の心や感覚を信じて選ぶこと。そうして選び進んでいる人からは、明るい未来へ向かうようなパワーを分けてもらっている気がします。 直営店には、転職、移住、誕生日、結婚など、人生の大きな節目に訪れる方が多くいらっしゃいます。たまに店頭に立たせていただく際に、その節目に立ち会える貴重な時間は、勇気や幸せをいただいています。そしてジュエリーは、そんな節目に選んでいただけるアイテムのひとつ。その中でunを選んでいただけることは、デザイナー冥利に尽きます。 例えば、「転職活動中で、願掛けにジュエリーを選びにきました」と来店してくださった方が、転職後に「このジュエリーのお陰で転職先が決まりました」と感謝の言葉を伝えてくださることもあります。その瞬間に立ち会わせていただけることは、何よりの喜びです。 そして結婚は、まさにその選択の象徴的な節目。unのブライダルリングを選んでいただけることは、背筋が伸びるような思いであり、深い感慨を覚えます。それは、ふたりがこれまで積み重ねてきた時間と、これからの未来を結ぶ「かたち」として、一生寄り添うものだからです。 わたしは、ブライダルリングをデザインするとき、もっと深い部分で、身につける人の意味や意思に寄り添えるように考えています。なぜ、そのリングを選んだのか。ブライダルリングを選ぶときは、より一層その理由が伴うものだからこそ、デザインが美しいとか、つけやすいといったことだけではなく、そっと寄り添えるような温かいコンセプトを大切にしています。 前置きが長くなりましたが、そんなunのブライダルラインに、今月新しいコレクションが加わりましたので、最後にご紹介させてください。 今回登場するのは、unを立ち上げて初めてコレクションとして発表し、今も愛され続けるフロストシリーズです。いつかブライダルラインにしたいと構想していたこのシリーズが、ようやく完成しました。 この独特のテクスチャーは、ある日の朝、光にきらめく霜の輝きに魅せられて生まれました。当時、その質感を生み出すために半年もの時間を費やしましたが、その表情はまるで天然石が留められているようで、光を受けるとキラキラと繊細に輝くのが特徴です。 エンゲージリングではダイヤモンドを留めていますが、写真のプラチナのリングはダイヤとテクスチャーが同化して、どちらなのか見分けがつかないほど。まさに、わたしが思い描いていた煌めきが形となった瞬間でした。 そして、ブライダルリングには必ず「願い」を込めて名前をつけています。冬の澄んだ空気に包まれた晴れやかな朝、透明な光をまとって煌めく霜の姿を、遠い記憶や思い出と重ね合わせるように…。それは、過ぎゆく時間の中でふたりが重ねてきた記憶を未来へと結ぶ光となることを願い、このリングを TSUIOKU《追憶》 と名づけました。 過去の笑顔も涙も、かけがえのないすべての瞬間が、いまを輝かせ、未来を照らし続ける。そんな想いを込めたブライダルリングです。店頭でぜひご覧いただけると嬉しいです。